冷たい風に怖気づきながらも、晴れ渡る空が味方となって、

モリタワー52階へと足を運びました。

豪華な装飾が色鮮やかに輝く衣装に包まれた宮殿の人々の肖像は、

肌の質感から瞳の内まで、

今にも、フレームから出てきそうなほど、生き生きと描写されています。

あまりに近くで見ることが出来るので、少し、ドキドキ。

フランスに歓迎されたアントワネットの美しさは際立っていて、

透き通るような白い肌に、ピンクの頬、大きな瞳、しなやかな指先に

しばらく見入ってしまい・・・ 気がつくと、深いため息が出てきました。

よく知っている絵画でも、ポーズを取る彼女がこの実画の先に立っていたと思うと、

より身近に思えて、本物から伝わる彼女の存在を肌で感じられます。

館内は、物語のように展示されてあり、とても分かりやすく、

プロモーションを見て想像していたよりも、内容が充実しています。

贅の限りを尽くした愛用品、ファッションリーダーとしての座、

プチトリアノンでの自由で質素な生活、生涯一度の恋、

やがて迎える悲劇の死まで・・

目を見張る豪華な品々だけでなく、遺書となる義妹への手紙、

目を背けたくなるような断頭台へ向かった靴が「TheEnd」を強烈に物語っていました。

わずか15歳で、政略結婚のため、祖国オーストリアから嫁ぎ、

フランス宮廷に閉じ込められたアントワネットは、

窮屈な生活から救いを求めて、贅をつくし、豪華な浪費生活で心を満たそうとしました。

彼女の政治的な知識の無さや宮殿の外にいる国民の貧しさを知らない、

知ろうとしなかった無知さが本人も全く予想しない死を迎えることになります。

幸か不幸か? 善か悪か?

私たちがどのように考えようとも、

彼女は、死を迎えるその瞬間まで、自己卑下することなく、

美しさと気高さを貫いたこと、そのことが、彼女が生きた証として遺されています。

 

時代の犠牲者とも言われていますが、フェミニンで、愛らしいアイコンとして

今も女性に人気があるのは、彼女の無垢さが窺がえるからでしょう。

 

私がとりわけ見たかったものは、愛するフェルゼンとの秘密の手紙の複写。

2人は、秘密の暗号でやり取りをしていました。

フェルゼンの作った実際の暗号表に、胸は高鳴り、

同時に、革命時の命がけの緊迫感を想像します。

昨年、解明された、黒く塗りつぶされた文字。

それは、アントワネットからフェルゼンへ。

「あなたを狂おしいほど愛しています。

一瞬たりともあなたを敬愛することをやめられません」

                                           公式ページより

200年の時を経て明かされるヒミツ。

ルイ16世に大切にされながら、

フェルゼンの愛に包まれた1人の女性の運命。

彼女の心の内にあった真実。

改めて、アントワネットの微笑みに目を向け、彼女が秘めていたものが見えてきました。

全てを剝ぎ取られ、死に向かう時、最期に持てるもの。

それは、心の中にあるのだと。

そして、それは、誰しもにあてはまるということ。